トコトンやさしい『プラズマ』の本
「第1章プラズマってなんだろう?(基礎編)」より抜粋
1 プラズマとはなんだろう?
■固体、液体、気体につぐ「第4の物質」
テレビの映画劇場で名画を鑑賞するのには大型画面のテレビがあれば楽しいですね。最近は薄型の大型テレビにプラズマの名前がよくつけてありますが、プラズマってなんでしょうか?魔法のテレビでしょうか?
まず、プラズマとは何かを簡単にご説明しましょう。冷蔵庫に入っている「氷(固体)」について考えてみてください。これを温めていくと「水(液体)」になり、さらに温めると「水蒸気(気体)」になる3つの状態の変化のことは皆さんご存じでしょう。では、もっともっと温めたらどうなると思いますか?(図)
原子を構成しているプラスの原子核とマイナスの電子がバラバラになります。これが「プラズマ」です。自由に動きまわる荷電粒子の集まりで、全体としてプラスとマイナスが同数あり中性です。「第4の物質」とも呼ばれています。
じつは、太陽や星を含め、宇宙の99.9%以上はプラズマでできています。私たちの地球も大宇宙のプラズマの海に漂う一粒の小舟にたとえることができます。北極で見られる美しい自然のカーテンとしてのオーロラもプラズマです。今日売り込み合戦の激しいプラズマテレビにもハイテクの匂いを感じさせる魔法の第4の物質プラズマが使われているのです。
「プラズマ」はカタカナで書かれていて何だか特別なひびきがありますが、もともとどのような意味の言葉だったのでしょうか?
ギリシャ語に由来し「成形されたもの」という意味があり、プラスチックと語源が同じです。入れ物の形に従って形を変えることができる物質という意味で、アメリカ物理・化学者のラングミュア博士により1928年に命名されました。ネオンサインのプラズマのように、色々の形に作ることができます。
プラズマは物理学以外でも別の用語として使われています。「神によって形作られたもの」の意味で生物学の分野では「原形質」を、医学の分野では「血漿」をさしています。
要点BOX:
●自由に動きうる荷電粒子の集まり
●名付け親は米国のラングミュア博士
2 宇宙のほとんどがプラズマ
■宇宙、環境、エネルギー
●宇宙はプラズマで満たされている
●温度や密度の違いでプラズマを分類
3 古代の物質観と4原素説
■エンペドクレスとアリストテレス
●万物のアルケ(根源)を求めて
●地水火風の4元素説と愛憎の二元論
4 現代の物質観と4つの力
■重力、電磁力、強い力、弱い力
●少数元素(古代)から多元素(近代)へ
●元素の原子核内の基本粒子=クオーク
5 原子の構造と発光の正体は?
■電子と原子核
●長岡モデルとトムソンモデル
●電子軌道の「量子化」と発光原理
6 プラズマの中の電場は遮蔽される
■デバイ遮蔽
●静電場と熱運動とのつりあい
●デバイ博士の電解質溶液理論
7 プラズマは振動する
■プラズマ物理学の原点としてのプラズマ振動
●プラズマには固有の振動数がある
●電波の反射、透過はプラズマ電子密度で決まる
8 プラズマ粒子は波乗りする
■ランダウ減衰
●波と粒子との共鳴的な相互作用
●波によるプラズマの加熱に利用
9 プラズマ中に磁場ができる
■ダイナモによる磁場発生
●運動エネルギーが磁場のエネルギーに変換
●太陽磁場や地球磁場の生成
10 磁場に絡みつくプラズマ
■サイクロトロン運動と波の減衰
●遠心力とーレンツ力とのつりあい
●粒子のサイクロトロン運動と波との共鳴
11 プラズマは波の宝庫
■電子波とイオン波、静電波と電磁波
●電子プラズマ波とイオン音波(磁場無し)
●アルベン波と磁気音波(磁場有り)
12 非中性でもプラズマ?
■反物質の閉じ込め
●対称性を有する閉じ込め
●遠心力、クーロン斥力、ローレンツ力が釣り合う
13 極限のプラズマは?
■強結合・縮退プラズマと相対論プラズマ
●イオン球半径と結合パラメータ
●負に帯電した微粒子を含むダストプラズマ
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山崎耕造 著
2004年7月 |
http://pub.nikkan.co.jp/cgi-bin/html.cgi?i=ISBN4-526-05316-3