エネルギーとは?

 

トコトンやさしい『エネルギー』の本

「第1章見なおそう!エネルギーの基礎」より抜粋

 


1 エネルギーとはなんだろう?

■アリストテレスの「エネルゲイア」

 いまから約5百万年前に人類の祖先である猿人があらわれ、直立して二本足で歩行するようになりました。人類は「火」のエネルギーを使い、農耕文明を築き上げてきました。そして、第二・第三の火としての「電気」・「原子力」のエネルギーを手に入れ、近代から現代への工業文明を発展させてきました。新しいエネルギーが新しい文明を築き上げてきたのです。

 近年、エネルギー問題は経済・人口問題のみならず地球環境問題とも関連して幅広い議論がなされてきており、「エネルギーの枯渇・節約」が話題となっています。一方、学校の理科では、「エネルギーは不変である」と教わりましたが、一般に使われている「エネルギー」と物理の「エネルギー」とは異なるのでしょうか?

エネルギーの言葉の語源は、古代ギリシャ哲学に遡ります。万学の祖としてのアリストテレスはプラトンの超自然的なイディア説を批判し、万物は形相(エイドス)と質料(ヒュレ)を有しており、運動の変化は可能態(デュナミス:形相の内在した質料)と現実態(エネルゲイア:形相の発現した状態)で説明できるとしました。この「エネルゲイア」は、仕事を意味する ”ergon” に接頭語の”en” が付いて「仕事をしている状態」を示しています。

 物理学では「物質にたくわえられた仕事をする能力」と定義されます。「力の大きさ」と「力の向きに動いた距離」の積(「仕事」)としてあらわされます。この仕事量は蒸気機関を発明したワットにより定義され、英国の医師で物理学者のヤングが仕事をする能力の概念としてエネルギーという言葉を使いました。

 そのような意味でもエネルギーは物理学では非常に重要な概念ですが、今日一般に使われている「エネルギーを消耗した」などの意味は、精神的な意味での「物事を行う気力」、また、物理的な意味での「エネルギーを生み出すことのできる燃料資源」のことを指しています。

要点BOX

●エネルギーは「物質にたくわえられた仕事をする能力」で、力とその向きに動いた距離の積

●語源はアリストテレスの現実態(エネルゲイア)

 


 

2 エネルギーは変化する

  宇宙の4つの力が源

●エネルギーの形態は、力学、電気・磁気、光、熱、化学・生物、核

●源は、重力、電磁力、強い力、弱い力の4つ

 

3 宇宙のエネルギーは大規模

■ニュートンの重力

●ニュートンが発見した万有引力は、重力場の歪みや重力子(グラビトン)の交換により伝わる

●重力のエネルギーは潮汐発電として利用

 

4 分子と化学の日常のエネルギー                 

■マックスウェルの電磁力

●化学反応は、原子間力、分子間力としての電磁力に起因

●日常のエネルギーの多くが電磁力に起因

 

5 地球内部のエネルギー                            

■フェルミの弱い力

●弱い力は弱中間子を交換して伝わる

●地熱発電は弱い力による放射性崩壊熱の利用、地磁気の維持も地球の熱対流に起因

 

6 原子の内部に潜む莫大なエネルギー            

■湯川秀樹の強い力(核力)

●核力は原子核内の近距離の力であり、クォーク間の力は交換粒子グルーオンに起因

●核エネルギーは原子炉、核融合炉で利用

 

7 生体のエネルギーも電磁力から                  

■光合成とATP

●植物での光合成では、光エネルギーをアデノシン三リン酸(ATP)に蓄積

●代謝は、ATPでの高エネルギーリン酸結合

 

8 熱エネルギーと「時間の矢」                       

■熱力学の第一・第二法則

●熱力学第一法則はエネルギー保存

●熱力学第二法則はエントロピー(乱雑さの度合い)増大

 

9 エネルギー問題とは?       

■トリレンマの克服

●経済成長、エネルギー確保、環境保全は3Eのトリレンマ(三つの矛盾)

●発展途上国で人口爆発、エネルギー消費急増

 

10 日本のエネルギー資源は?                     

■低いエネルギー自給率

●日本のエネルギー自給率は4%、原子力を含めても20%で、きわめて低い。

●食料自給率も他国に比べて低く40%。

 

11 超長期エネルギー予測は?                    

■21世紀は「環境の世紀」

在来型の石油は2030 年にピークを迎え、非在来型の石油や天然ガスが生産される

再生可能エネルギーは2100 年に20%以上

 


 

山崎耕造 著
A5判 160頁


日刊工業新聞社
2005年2月


http://pub.nikkan.co.jp/cgi-bin/html.cgi?i=ISBN4-526-05407-0

 


       


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